2008/08/23

あえて異彩を放つ

この施設でどういう存在を目指そうか、どういう振舞い方をしようかと最初の頃は迷っていたけれど、どこまでも迎合することなく「あえて異彩を放つ」という方針を貫いてきて正解だったなぁと思うこの頃。

なぜなら、幼い頃からこの施設で育った子たちは、この施設内での生活が当たり前。外の世界といったら、徒歩5分圏内の学校と病院だけ。幸い施設で働いてる大人たちや病院のお医者さんたちとの交流はあるものの、はっきり言って、彼等の世界はめちゃくちゃ狭いのです。

あたしにとっての「豊かさ」とは「人生における選択肢の多さ」だと宣言したことがあったとは思うけど、「他者と自分との違いを受け入れられる器」も、豊かな人生を歩む上での大きな要素。この器の受け口をどれだけ広げられるかで、住む世界の広さが決まってしまうと思うのです。


この施設の中では、例えばペルー人のスタッフたちと同じように行動しようと思えばそんなに難しくはない。でもあたしは、あえて「このまま」で居ようと決めたのです。

キリスト教徒じゃないと宣言し、お酒も飲めばタバコも吸うし(もちろんチビッ子達の前では絶対にしないよ)、休日と認められた週末はそれなりに自由に過ごし、あたしのお部屋の中は土足厳禁を徹底させる。時間を守らないこの国で、とうとうと「時間を守ることの大切さ」をしつこいくらいに言い聞かせる。

正直言って、この施設の中ではかなりの異質な存在で、わりと自由に行動させてもらってます。そう決めたのは、こども達に「自分とは違うものを尊重する」ってことを感じて欲しいから。そして自分たちの世界が全てではない、外の世界の方が断然大きいということに気付いて欲しいから。


最初は「キリスト教じゃない」と言ったら、小学生のこども達の中にはそれ以外の宗教がこの世に存在することを知らなかった子も居た。「あたしのお部屋に入る時は靴を脱いでね」と言っても、理解出来ずに土足で入ってきた子も居た。「時間を守りなさい」と言っても、「セニョリータ、ここはペルーだから仕方ないよ~」と返してくる子も居た。

もちろんあたしは毎週ミサに出席しようと思えば出来るし、自分のお部屋を土足で使うことも実は大した問題ではない。例えばこども達が病院や学校に行く時間を守らなくても、正直言ってあたしには被害はない。


でも、あたしはこのまま、あえて異彩を放つ。自分とは全く違う環境で育ち、全く違う信念や習慣を持っているけれど、それでも(たぶん、それなりに。笑)普通に生きている人間が居て、そういう人が自分たちと一緒に、愛情と敬意を持って生活してるっていう単純な事実を肌で感じてもらいたいから。

少しずつだけど確実に、突然Hogarにやってきた日本人と自分たちペルー人との違いを素直に受け入れて尊重してくれる子が増えてきたなぁと感じるこの頃。ふとした瞬間に、大きな喜びを感じます。


そんなこんなで、こども達との関係はかなり良好。
9月末まではこのままこども達(特に女の子達!)との信頼関係を深めることを最優先します。そして10月から、スタッフやマードレたちとの交流に力を入れていこうと決めました。こういう区切りを決めないといつまでもダラダラしてしまいそうなので、報告書作成の時期に合わせてアプローチすることにようやく決めました。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

なるほどな。郷に入っては・・・かと思っていたけどそうでもないんだね。てっきり子供と一緒に教会に通ってるものだと思ってた。そういう刺激になる存在の人が普通に一緒に生活できてるってイイことなんだろうな!

匿名 さんのコメント...

そう決めるまでにマリコちゃんの中ではいろいろな葛藤もあったのかなーなんて思いました。
自分を信じきらなければなかなかできないこと。そして子供たちを信じなければできないことだよね(^^)
他の世界があり、他の大切なものがわかってくれるといいね。
そしたらその逆も教えられそうね(^^)

Mari さんのコメント...

>GQ
なんて久しぶり(笑)元気かね?
郷に入っては…と思ってはいたんだけどね、あまりにもこども達の世界が狭いって事実に衝撃を受けたので、あえてこの路線を選択することにしたのよ。こういう事が「日常」「当たり前」だと、無理なく視野が広がるかなと思ってさ。


>まきさん
そーなんです!最初はどういう方針にしようかかなり迷っての任地入りだったんですけどね。とにかく自分と異質の何かを素直に受け入れてさらに尊重できる人間に育って欲しいなぁと思うわけです。
そしてまきさんの言うとおり、最終的に自分や自分の国の持っているモノの良さを知ってもらえたら良いですよね!