2009/02/17

Julioの決断

12月に出て行ったJulioが昨日、叔母さんのお家を出ました。これからお仕事を始め、夜間の学校に通い、一人立ちします。ついに彼は、自分の人生の歩み方を、初めて自分で決めました。

ご両親が生きているかも知らない状態でHogarに連れて来られ、そして学校を卒業するまであと1年だけなのに、マードレの理不尽な都合で残念ながらHogarを追い出され、一昨年になってひょっこり現れた「私が叔母です」という人と一緒に住んだお家はとっても居心地が悪く、さらにはご飯も満足に食べられなかった。自分の意思とは全くと言って良いほど関係ない要素に支配されて生きてきたJulioが、自分で自分の人生を切り拓くと決めたのです。


12月の終わりから、叔母さんのお家に行ってから全然幸せそうじゃないJulioを見てきたから、スタッフのRuthと一緒に、何とか彼の力になれないだろうかと考えてきた。少し時間はかかったけれど、Ruthのお兄さんがお仕事を探すのを手伝ってくれて、力仕事だけれどちゃんとした会社でのお仕事を見つけれくれることになった。そしてRruthのお友達のお家に、間借りさせてもらえることになった。Julioも、自分で覚悟を決めた。

それを聞いた叔母さんはものすごく心配して、猛反対。彼女には6人こどもがいて、4人は成人しているのに、誰も働いていない。言うなれば「子離れできないお母さん」なのです。そして「Juulioにそんなこと吹き込んだのはどこのどいつだ!連れて来い!」という事になり、昨日の夕方、Ruthとあたしは彼女のお家にお話をしに行ってきたわけです(笑)

30分で切り上げる目標だったのに、結局、3時間は喋った。とにかく、疲れた。前々からJulioから聞いてはいたけれど、叔母さんは強烈なマシンガントーク。喋っても喋っても話の腰を折られ「Julioのこと愛してるから、心配だから、この家で学校を卒業しなきゃだめ!それまでお仕事なんてさせません!」の一点張り。スペイン語にだいぶ慣れてきたと言っても、あのマシンガントークに太刀打ちするには、ものすんごい集中力での思考と勇気が必要でした…。


叔母さんとの話し合いは、残念ながら上手くはいかなかった。本当は、叔母さんにも、Ruthとあたしがどんな人間で、彼がHogarに居た時はどんな子だったか、そして、どうして彼女のお家を出て一人で生計を立てていきたいのか、きちんと理解してもらいたかった。そのために、わざわざ行ったんだから。

だけど残念ながらそれは無理でした。叔母さんは、本当に残念ながら、人の話を聞いてくれない(聞けない?)人でした。あの喋り方、あの接し方では、あの頑固なjulioの心は拓けないってこと、ちっとも解っていない。いや、例え彼が頑固じゃなくっても、かなり厳しいでしょう。

彼女と会話をするJulioの姿はまるで、あたしと仲良くなる前の彼。あるいは、話を聞いてくれないHogarのマードレやスタッフから一方的に非難されている時の態度でした。それを見て、あぁ、このお家には本当に「彼の居場所」はないんだなということが良く解ってしまった。話を聞いてくれず、自分の考えや価値観だけをひたすら、相手に反論の余地を寸分も与えずに喋り続ける…そういう相手を、どうやってconfiarしろって言うんでしょう。


話し合いの中で、「なんでもっと心を開いてくれないの?もっと信頼しなさい!」と何度も何度もJulioに言っていた。信頼っていうのは、しなさいと言ってしてもらえるものでは決してない。一方的に喋り続けたからって生まれるものでもない。(ふと、昔「家なき子」ってドラマで「自分のことを信用しろと言う人のことは信用するな」と、京本政樹が安達裕実に言っていたのを思い出した自分にウケた。笑)

もしかしたら彼女は、家族でもないスペイン語も上手くない外国人の方が、自分の甥っ子とかなりの信頼関係を築いてることが気に入らなかったのかも知れない。叔母さんに「どれだけ前からjulioのこと知っているのか知らないけど」とか「何を吹き込んだのか知らないけど」とか、とにかく色んなことを言われたけれど、あぁ、この人は本当に解っていないんだなぁと思った。

あの天下一品級に頑固なJulioがあたしの言う事には真摯に耳を傾ける理由。そして、ここまでの信頼関係を築けた理由。そこにはたぶん難しい理屈なんて何もなくて、ただ単に、愛情の深さと質の違いだと、今、思う。だからJulioは毎日あたしのところに来て色んな話をしてくれて、あたしは彼の話を聞いたんだ。そして、まだまだスペイン語で言いたい事が上手く言えなかったあたしの話も(かなり辛抱強く)聞きたがってくれるようになった。


本当は全員が納得する形で、平和に話し合いを終えたかった。けれど、それは無理だと悟ったJulioは叔母さんのお家を出ると決め、荷物をまとめて、昨日、出てきた。彼はもう18歳。ペルーではもう立派な成人だから、当然の権利。

「自分の家族」だとは思えない叔母さんのお家での生活は、苦痛で仕方ない。そんなこと、見れば解る。顔色もものすごく悪いし、彼だけでなく、久し振りに会った弟のRicardoもびっくりするくらい細かった。「自分の居場所」を自分自身で探すために、そこを出て働きたいという18歳の彼を止める権利が、誰にあるだろう。


新しいお家の家主さんとお話が出来る日曜日までは、Hogarのお隣にある教会のパードレ(神父様)にお世話になることに。とりあえず、一安心。夜、教会でようやく落ち着いた彼と、やっとゆっくり喋れた。

「こんなにたくさんの人が自分のこと助けてくれるとは思わなかった。助けてくれたみんなのために、ちゃんと働いてちゃんと学校も卒業する。頑張る。」と、言ってくれた。偉い。ちゃんと解ってるじゃん。


本当のこと言うと、あたしはその言葉を聞くまで、すごく不安だった。叔母さんとの話し合いは上手くいかなかったから、もしも彼がこれから一人でやっていけなくなったとしても、唯一の肉親である叔母さん達にはもう頼る事が出来ない。そして、マードレが彼をHogarから追い出したがった理由に、エンマヌエル協会からの要請で来ているあたしとすごく仲良かったという事もあるから、かなり責任を感じてた。

これで路頭に迷うようなことがあったら、あと1年ちょっとで日本に帰ってしまうあたしはどうやって責任を取ろうかとも考えた。普通にサラリーマンやってて、どれくらいのペースでペルーに来れるかな、今かなり景気悪いしな、なんてことまで(笑)

でも、「助けてくれたみんなのために」って笑顔で言えるJulioで良かった。その言葉に、あたしは救われた。彼はきっと、大丈夫。自分のことを、こうやって支えたがる人たちが居るってことを解ってるし、その人たちに恩返ししたいって気持ちまで芽生えてる。叔母さんのお家に居た時よりもずっといい顔しているJulioを見て、あたしは今、本当に嬉しい。


ちゃんとお仕事を始めて夜間学校にも通ってちょっと落ち着いたら、あのマシンガン叔母さんに、また会いに行って欲しいなと思う。叔母さんのお家を離れても、ちゃんとやってるよっていうことを、胸を張って報告出来るくらいになって欲しい。

そして、生まれて初めての自分の選択と決断に、自信を持って欲しい。

Si tu quieres, tu puedes!
Hermanito, siempre estoy contigo de tu parte.

2 件のコメント:

ken さんのコメント...

Julioの決断と行動に、エールを送りたいと思います。
まりちゃんと築いてきた、そしてこれからも築いていくだろう信頼関係が彼にとっての大きな支えとなることを願いつつ。

Mari さんのコメント...

Kenさん…!!
嬉しいです。
ありがとうございます。

3歳からずっとHogarで生活をして、大人たちに指示されたことをするのが当たり前だった彼が、初めて自分の足で新しい一歩を踏み出そうとしています。今までと変わらない距離で見守っていきたいものです!